飛蚊症の症状は目の病気を知らせるサイン。
飛蚊症は、眼球内の一部分である硝子体(しょうしたい)と呼ばれるゼリー状の透明な物質内に浮遊する物体が網膜に投影されて、「虫」や「糸くず」、「アメーバ」などの形として自覚される症状です。
その原因は、生理的なものと、病的なものに分けられます。
生理的飛蚊症は、病気ではない正常な状態でも出現します。多くは加齢が原因で、完全に消失することはありませんが、「慣れてしまうと気にならなくなる」ことが多い。この生理的飛蚊症は経過観察しても問題ないとされています。
いっぽうの病的な飛蚊症の場合は、積極的な治療を要するもの。症状が出現したり、悪化したりする場合は、すぐに眼科に受診することが必要です。では詳細に説明します。
生理的飛蚊症
飛蚊症の正体は、硝子体の中にある線維や細胞成分が網膜に作る影。
まず、生理的飛蚊症ですが、硝子体の中にある線維や細胞成分が網膜に作る影が、飛蚊症として自覚されるものです。
視線を動かすといっしょについてきて、光の加減で白く見えたり黒く見えたりします。目に光が入らない真っ暗な状態では見えず、白い壁や青空を見たときにハッキリ見えることがあります。浮遊物は、実際には目の前にあるわけではなく、目の中にあるのです。
若いときには硝子体は透明で濁りがありませんが、年齢に伴い濁りが出ることがあります。もう少し詳しくいえば、年齢が進むとともに線維(細い糸状の物質)と水分が分離して中に空洞を形成します。その空洞の縁に線維などが集まり、それが光の加減で影を作るのです。
加齢とともに硝子体がしぼんで後部硝子体剥離が起こりやすくなる。
硝子体は加齢とともに少しずつ液体に変化し、しぼんできます。そして60歳前後になると、網膜から剥がれて硝子体と網膜の間に隙間ができます。これを後部硝子体剥離といいます。
水分と線維分が分離してゼリー状の硝子体が縮まると、それを包んでいた膜が網膜から離れ、浮いた状態になります。硝子体を包む薄い膜のしわや影が網膜に映ると、ごみや糸くずのように見えます。
後部硝子体剥離は誰にでも起こる可能性があります。とくに強い近視の人では眼軸が長いため、若い頃から後部硝子体剥離が起こりやすのです。
硝子体剥離自体は生理的なもので病気ではありません。一般的には問題がないことが多いのですが、以下で解説する網膜裂孔や網膜剥離という病気を引き起こすことがあるので注意が必要です。
病的飛蚊症
後部硝子体剥離が「網膜裂孔」を引き起こし、さらに「網膜剥離」につながる。
病的な飛蚊症の代表的なものとしては、網膜剥離につながる飛蚊症があります。
後部硝子体剥離が起こる際に、網膜を強く引っ張ってしまい、網膜に穴を開けてしまう「網膜裂孔」(もうまくれっこう)です。網膜に裂け目ができると、眼内の水分が網膜の下にしみこんで、網膜剥離(もうまくはくり)を起こす可能性が高くなるのです。
網膜裂孔の段階で、レーザーによる治療が必要です。 大切なのは、レーザー治療はあくまで網膜裂孔が網膜剥離に進展しないための治療であり、厳密には飛蚊症を治すための治療ではないということです。
飛蚊症が増えるのは単に加齢現象なのかそれともこのような病的なものが原因なのかは、眼科に行って検査をしないとわかりません。今まで見えていた飛蚊症が急に増えたり、広がるようであれば、必ず眼科を受診しましょう。
網膜が裂けて穴が開く網膜裂孔の前兆「光視症」
2つ目は、強い光の筋が多発して見える場合です。眼科では「光視症」といわれる現象です。
「ピカピカと光が見える」「キラキラしたものが見える」「稲光が見える」など、訴えの表現はさまざまです。
硝子体は、前述した通り、若い頃は網膜に接着していますが、加齢とともに縮み、網膜から剥がれてきます。これ自体は「硝子体剥離」という現象で誰にでもおこることなのです。
ところが、網膜の端のほうでは硝子体と網膜の接着が強いため、硝子体が網膜を引っぱる力が働きます。この網膜を引っぱる刺激を、光として感知してしまうのです。
まったく光源がない部屋などで、夜中ピカッとして「電気がついていないのになぜ?」と、びっくりして眼科を受診される人もいます。
光視症そのものは病気ではありません。基本的には、治療を必要としない症状といえるでしょう。その他の原因がなければ、時間の経過とともに症状は治まります。網膜から硝子体が剥がれてしまえば光視症はなくなります。しかし、接着が強すぎて網膜が裂ける、まさに穴が開く網膜裂孔の前兆の場合もあるので注意が必要なのです。
網膜裂孔は網膜剥離につながります。網膜剥離も早めにわかればレーザー治療ですむ場合があります。それですめばいいのですが、レーザー治療のタイミングを逃すと硝子体手術といって手術まで必要になることがあるのです。
手術が必要な人のほとんどは、このように急に増えた飛蚊症、または頻発する光視症を自覚しているのにも関わらず放置していることが多い。仕事で眼科にいけなかった、いつか治ると思い放置していた、という理由で手遅れになるのです。
重大な目の病気のサインとなる「病的飛蚊症」
飛蚊症のなかには次のような重大な目の病気の一症状であることがあります。
・硝子体出血(しょうしたいしゅっけつ)
糖尿病や高血圧、外傷により眼底で出血が起こり、その血液が硝子体に入ると突然飛蚊症の症状を自覚したり、目の前に赤いカーテンを引いたように感じたり、視力が著しく低下したりします。
出血が少なければ自然に治る場合もあります。最初は軽症でも、日に日に影が濃くなるようであれば、出血が続いていると考えられます。症状により出血部分にレーザーを当てる光擬固法を行う場合があります。
・ぶどう膜炎
ぶどう膜に細菌やウイルスが進入すると、血管から白血球進出物が硝子体に入り込み、飛蚊症の症状を感じます。まぶしく感じたり、眼痛、かすみがかかったように見えたり、充血、視力低下を伴うことが多い。炎症を抑えるための内服薬や点眼薬で治療します。
※ぶどう膜とは、眼球の内側にある脈絡膜(みゃくらくまく)と毛様体、虹彩(こうさい)の3つをまとめて呼ぶ総称です。これらは眼球の中心部を包み込むように広がっています。何かしらの原因でこれらの組織に炎症が起きることを「ぶどう膜炎」と呼ぶのです。
このように飛蚊症の量や併発する症状によって重症な病気がわかったりします。
多くの飛蚊症は生理的な飛蚊症であることがほとんどです。しかし、問題のある飛蚊症なのか、問題のない飛蚊症なのかは、検査をしないとわからないのです。
とくに注意をしないといけない人は、
・50歳以上の人
・近視が強い人
・目をぶっつけたことがある人
・糖尿病を指摘されている人
・元々強い近視の状態で白内障手術をされた人
飛蚊症にはさまざまな原因があり、実は硝子体混濁にもさまざまな原因があります。だからこそ、早期発見・早期治療に努めることが重要になるのです。
昼食に毎日パイナップルを200g食べて飛蚊症が改善!?
2019年4月、ある食べ物で飛蚊症が70%も改善されたという報告がありました。
2019年に台湾で行われた研究でパイナップルを3カ月食べたら飛蚊症が改善したという報告あったのです。
パイナップルが注目されたのは、その成分の中のタンパク質分解酵素の「ブロメライン」です。ブロメラインは飛蚊症の原因であるコラーゲンのような硝子体線維も分解することができます。例えば酢豚にパイナップルが含まれているのも、タンパク質を分解してお肉を柔らかくしているからです。この酵素に注目してパイナップルを食事として摂ると眼内の浮遊物にも効果があるのではないか、と考えられて研究が行われたのです。
平均42歳の388人にパイナップルを食べてもらい、実験が行われました。一つだけ飛蚊症が見えている120人と、複数の飛蚊症が見えている70人の2つのグループを作り、それぞれ毎日昼食にパイナップルを200グラム食べてもらうというシンプルな内容です。3カ月後にはなんと全体の約70%の方が飛蚊症を自覚しなくなったというのです。
120人(1つの飛蚊症が見える人)→70.8%改善
70人(複数の飛蚊症が見えている人)→72.8%改善
飛蚊症の原因である硝子体の混濁がパイナップルを食べるだけで改善できるのであれば夢のような話です。
しかし、この研究はジャーナル オブ アメリカン サイエンスに掲載され注目されたのですが、被験者の飛蚊症の原因や背景については言及しておらず、性別と年齢の比率についても言及していません。さらに、パイナップルを食べなかった飛蚊症の人々の対照グループがありませんでした。それだけに単純に信じることができず、考慮する必要がありそうです。
「私も挑戦してみようかな?」と思われた方への注意点。パイナップルは糖分であるため糖尿病があったりカロリー制限がある方は摂取量を注意しましょう。
さらに、ブロメラインは酵素のため熱処理すると不活化され、缶詰のパイナップルやパイナップルジュースでは効果がないようです。生のパイナップルを食べるのをおすすめします。